マツさん   『一願成就』

posted:2023.11.20   location:兵庫県高砂市 鹿島神社  photo:@mako_spo / @yuji_iwaki / @a.yasuda.1976

OKAYAMA TRAIL RUNNING ASSOCIATION YOUTH GROUP

過酷な100マイルレース完走を目指して


岡山のトレイルシーンでその笑顔を見たことがある人は多いはず。

ランナーとしても、ボランティアとしても、OTRAメンバーとしても活躍するマツさん。

ここ数年、100マイルレースに魅せられて、完走を目指し挑戦を続けていました。

そして、今年ついに念願の100マイルレースを完走。

過酷なレース環境の中でマツさんが見た景色とは。

マツさんのトレイルランニングのルーツであり、ホームマウンテンでもある播磨アルプス。

その麓にある『一願成就』で有名な鹿島神社で、マツさんのトレランライフについてお聞きしました。

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ROOTS

トレランを始めたきっかけと出会い

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――岡山でよくお見掛けするのですが、地元は兵庫県なんですよね?

地元は兵庫県です。
ここ播磨アルプスは私がトレランを始めた場所です。
花崗岩の一枚岩や砂地のトレイルなど色々なサーフェスがあってテクニカルなので、ここで走り始めたから自分は下りが得意なのかもしれません。

――昔からトレランしているんですか?

トレランは2013年から始めて10年経ちました。
その前はロードバイクで走ったり、ランもロードを走っていました。でも、ずっと右膝がよくなくて。
それで膝が痛くならないような運動をしたくて、トレッキングを始めました。

毎週播磨アルプスにトレッキングで来るようになって、膝の痛みもなくなって継続していましたがYouTube でトレランを知って走る様になりました。

――岡山に行くようになったきっかけは?

岡山に行くようになったきっかけは、5年ほど前の最上稲荷トレイルランレースのコースマーキング、コース整備に参加したのがきっかけですね。

ここで知り合ったのをきっかけに友人の輪が広がって岡山の山に文字通り沢山行くことになりました。

TAMBA

TAMBA100への憧れ

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――丹波にもよく行かれているとお聞きしましたが、そのきっかけは?

黒井城トレイルランニングレースのボランティアをする様になったのがきっかけです。
それで知り合いも増えて土地も知って、走りに行く様になりました。

その後、2021年4月に開催されたTAMBA100アドベンチャートレイル(Pre-stage)の50マイルに参加して完走しました。

また、NHK BS放送「グレートレース」 でも放送された、2021年11月に開催のTAMBA100アドベンチャートレイルにはボランティアで参加しました。

この時に選手達を間近で見てTAMBA100への憧れが強くなりましたね。

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――TAMBA100には今年は選手として出場されてますね

今年6月に開催されたTAMBA100アドベンチャートレイル2023の100マイルに出場しました。

――写真で拝見しましたが、斜度が険しくて、めちゃくちゃ厳しい大会ですよね?

めちゃくちゃ厳しい大会です。山の登りで足が滑るし、下りなんて「滑り落ちるしかない!」みたいなところがあったり。

やっぱり、アドベンチャートレイルだから、トレイルランニングの「ランニング」とは謳ってないんで(笑)
100マイルも距離170kmの累積標高16200mと厳しいスペックで、試走に行くたびに後悔するっていう始末です(笑)

――難しいコースなんですね

TAMBAは独特で、他にない傾斜が続くので毎週末丹波の山に入って試走して登りを強化する練習を中心に準備しました。
ゴールデンウィークは7日連続で走ったんですが毎日が地獄でしたね(笑)

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――TAMBA100マイルは実際出場してどうでした?

強雨で警報が出ていて予定の7時にスタートできず145kmに短縮の15時スタートになって、TAMBAで100マイルに挑戦できない悔しい思いの中のスタートでした。

距離が短縮されたんですが同じく時間も短縮されて、36kmの関門時間が現実的でないくらいに厳しくなって。

そこの関門時間をめがけてペースを上げて走っていたんですけど、途中の下りの抜きがけで転倒して左腕を大きく切創したりして。

ペースも落ちて関門時間に間に合わなくなってしまいました。

特例措置で100kmカテゴリにレースの途中で変更ができるとのことで、26kmのエイドで申告して100kmカテゴリに切り替えました。

――ただでさえ過酷なTAMBAアドベンチャートレイルですが雨でさらに過酷でしたね

15時に雨の中スタートして、夜半も降り続きました。視界も悪く平坦な道も滑ったりと苦労しました。特に下りは滑って滑って。

目の前で友人が下りで滑って腰を強打し呼吸ができなくて動けなくなるなどトラブルもありました。

朝方には雨がやんで、翌日は天候は回復しましたが、70kmを超えて水膨れが両足の裏に大きくできてしまい、90kmのエイドまで我慢して進んでサポートのマチャさんに処置してもらって。

そこから走れる様になって無事にゴールまで辿り着けました。

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100 MILE

100マイルレースを完走したい

――過酷な大会の話を聞くと、普通の人からすると「なんでそこまで?」と思うと思いますが、そこまでする理由は?

「TAMBA100でマイルを完走したい!」っていう強い思いがあったので。
「やるからには全力で」っていうことです。

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――今年に入ってコーチングを受け始めたんですよね

去年数レースの100マイルに挑戦しましたが120~150kmぐらいでDNFが続いていました。

このままじゃTAMBAは難しいという思いもあってTOMOさん( @rd_tomo )のコーチングを受け始めました。今はやればやるだけ結果がついてきている感じ、上積みがある感じです。

――TAMBAの後は?

TAMBAで結構走力が伸びた感覚があって、よく厳しいって聞く10月に開催のKOUMI100にチャレンジすることにしました。

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KOUMI100

念願の100マイルを完走

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――その上積みを持って臨んだKOUMI100はどうだったんですか?

KOUMIは初めてだったので、8月の夏季休暇に試走へ行ったんですよ。3日間車中泊して毎朝コースを1周(約35km)合計3周しました。

――試走の感触はどうでしたか?

コースが知れたのが大きかったです。
TOMOさんからエイドごとの区間タイムのペースが提示されるんですが、本番に向けて距離感とペース感が一致できました。

あとは、町について知れたのが良かったです。
どこにスーパーやコンビニがあってとか、スタート地点には何があって、どんな環境でみたいなのも分かるので。

行ったことない町だとちょっと心配でしょう。それがなかったのは精神的にも大きかったですね。
そこも含めて試走に行ったんですけど、本番に向けてアドバンテージになったと思います。

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――レースは順調に進んだのですか?

KOUMI100は約35kmの周回を5周するんですが、朝5時にスタートして2周目終盤の夕方から雨が予定より早く降り始めてしまいました。

その後も酷くなって結局最後まで降り続くんですが、コースは標高が1200〜2200mと雨が降らなくても0℃くらいの気温なのに、「これはやばいなぁ寒くなるなぁ」って。

そんな中でも進んでいたんですが、寒さの為か4周目途中から食べられなくなって。
食べてもお腹を下してしまって……大変でした。

4周目から友人のマコリン( @makoissa )にペーサーについてもらいましたが、私がお腹下していても結構厳しく引いてくれるんです。おかげで前に進み続けられました(笑)

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――ペーサーはメンタルで影響が大きそうですね

そうですね。鼓舞してくれるし、自分だけだったら辛くなったらペースを落としてしまうけど、頑張らないといけない。 あと、マコリンはマイルの経験も豊富で、自身の経験なども踏まえて、都度対応してくれました。

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――どこで完走を意識しましたか?

4周目帰って来たときの時間でいけそうだなっていう感覚はあったけど、結構調子が悪かったから不安でしたね。

でも、5周目のにゅうの下りが結構走れたんですよね。そこを越えていけそうってなって、残り10kmの最後のエイドでもうゴールできるなって確信しました。
最後はマコリンと完走を味わいながらゆっくり進みました。

一一今までの長い道のりを共有しながら進む時間……100マイルの醍醐味ですね

はい、何とも言えない良い時間でした。
でも、そこで結構他の選手達は走っていて、20人くらいに抜かれちゃいましたけどね(笑)

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――100マイル完走はどうでしたか

準備してきたことが実になって達成感がありました。マイコーチTOMOさんもGOOD JOBって言ってくれて、嬉しかったですね。

走り終えた今は、ひとつ壁を越えた感じがあります。次は準備次第ではもっと上に行けるなっていう感覚があって、それは相当大きいですね。

今回の4~5周目も経験のあるマコリンの対応を身をもって体験できたんで。実際に走力も上がっているし、去年のDNFの経験も生きたと思っています。

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OTRA

OTRAについて

――OTRAについて

岡山県にはトレランの大会が数多くあって、それらを繋ぐOTRAがあって、さらにランナーも繋いでいる。

OTRAの様な組織は、兵庫県では作れないなって思うし正直羨ましいです。岡山県のトレイルランナーは幸せな環境にいると思います。
これからもOTRAを大切に育んでいって欲しいです。

自分も引き続きOTRA員としてトレイルランニングに寄与していきたいと思っています。

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NEXT

来年の目標

――トレイルランナーとして今後の目標は?

ランナーとしては年齢から、「あと何年かしかない」っていう思いがあって。

競技的に上げていこうとするのであれば、もちろん50代でもバリバリやっている人もたくさんいますが、そこまでにはある程度上げとかないとっていうのもあるので、引き続きマイルに挑戦していきます。

来年の目標は、完走だけでなく順位も狙っていくことですね。

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RACE PROFILE

大会情報

TAMBA100アドベンチャートレイル


「世界一過酷」を謳うトレイル大会。
兵庫県丹波市で開かれる。険しい勾配の山々を中心としたコースは全長100マイル超(約170キロ)。
上り坂を合計した「累積標高」は約1万6200メートル。丹波地方のどかな里山が一転、世界に類を見ない過酷な戦いの場になる。

2023年大会
大会名 TAMBA100 アドベンチャートレイル2023
開催日 2023年6月2-4日(金-日曜日)3日間
開催地 兵庫県丹波市
距離(100mile) 約168km→145kmに変更
制限時間(100mile) 56時間→48時間に変更
完走率(100mile) 27%(2023年)
主催 TAMBA100アドベンチャートレイル実行委員会
WEB https://trailrun-tamba.com/
MAP

OSJ KOUMI 100


八ヶ岳東部の小海町松原湖周辺から稲子湯にかけて35kmのコースを5周回する国内屈指の難易度を誇る大会。各エイドステーションへは車でのアクセスが可能。

2023年大会
大会名 OSJ KOUMI100
開催日 2023年10月7日(土)~2023年10月9日(月・祝)  3日間
距離 約175km(35km×5周)
制限時間 36時間
完走率 40.2%(2023年)
開催地 長野県小海町松原湖~稲子湯周辺
主催 OSJ KOUMI100実行委員会
WEB http://www.powersports.co.jp/osjtrail/23_koumi100/
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